物心つく頃から戦争したり休戦してみたり、そんな土地に住んでいたらいい加減―――強引なやり方で休戦協定が破られたからって、一々騒ぐ気にもなれなくなるのは、私の育った街が、穏健派のサウザンフォートだったからなんだろうか?

 けれど、サウザンフォートにだって声高に打倒グリューンラントを叫ぶ輩は少なくなかったから、結局のところは、ただ単に私がそういう性格だというだけの話なのかも知れない。
 
 
 十四の時にアッパーヒルの寄宿舎に入り、就学は六年間。卒業後大抵の友達は、家業を継いだり職人に弟子入りしたり交易を始めたり。それぞれの街に戻って役人になるってのも、結構多かった。

 けれど。

 いろんな學問を抓むだけ抓んだだけの私はといえば、継ぐような家業もなく(あっても私は長子ではないし)、職人になるには目移りが激しくて、まともな働き口さえ見つけないまま、深い理由もなく何となくでツェントルに移ってきた。

 金儲けばかり考えてるっていうのも性に合わないから自分で商売を始めようってワケでもない。それでも、生きてくってだけでもお金はかかるから、住み込みのバイトを募集してた小さな店に落ち着いて、どうにか自分一人の生活ぐらいは保っていた。

 時給は高くなかったけど、住み込みだから宿無しにだけはならなくて、それだけでまぁいいかな、なんて思って。


 役人……? そんな道もないことはなかったけれど、愛国心に凝り固まった連中の吹き溜まりに首を突っ込むなんてことは、あまりにもぞっとしない。
 同じ店で働いてる女の子とか、顔見知りの子達は副市長――私と同い年で、学生時代から優等生で通っていた奴だ――をしきりと褒めそやすけど。役人になり たくないのと同じような理由で、あんな風に一人の人間に心酔しきってるようなのは別の生き物にしか見えなくて、私はかなりジェイルが苦手だった。
 

 そういえば、幾つもの盲信が集まると戦争は泥沼化するって言っていた歴史の教授は、いつの間にかアッパーヒルから姿を消していた気がする。
 私も、もう少し声高に主義主張をあげていたらどこかに追いやられていたのだろうか?

 もっとも、私には、一々そんなことをするような趣味も気力もなかったんだけれど。
 

 

基


代書屋ヒロイン編スタートというかリメイクというか……
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