「あ、ピンク色のオーラ」
寮に向かう途中の角で、それに気がついた弘樹は、つと足を止めた。
ここ最近よく見かける、それゆえにすっかり見慣れてしまったオーラの主は、今日も誰かの帰りを待っているのだろう。
「なになに、どうかしたのか?」
ボソッとした言葉は聞き取れなかったものの、相方がついて来ないことには直ぐ気付いたらしい大津。同じく立ち止まり、一歩後ろの飯島弘樹を振り返る。
小さく息をついて、弘樹は「いいや」と首を横に振った。
「そか?」
大津は首を傾げたものの、深く気に留めることもなく
「じゃあちゃっちゃと歩くぞ! 今日の献立エビフライだしな!」
元気いっぱい笑顔満開。
けれど。急かす彼の言葉の半ばごろから、弘樹はスタスタと歩き始めている。
その速さは先程までの1.5倍。常日頃から崩すことの少ない、気だるげな無表情で今度は彼が、大津秀治を振り返る。
「ほら、急ぐんじゃなかったの?」
動作の途中、視界に入った雪村の制服はスルーして、マイペースな彼に対する大津の抗議もスルーして、弘樹は更に足を速めた。
オーラが曇る。
それは分かっていたけれど。
どうにかするのは自分の仕事じゃない。
自分の行動を、そう、正当化させた。
4月16日〜9月23日まで丸5ヶ月間もWeb拍手のお礼として置かれていた「学園小説風」の一品。にもかかわらず片方が霊感少年なのが霞的というか……
(20060416)
使用素材配布元:LittleEden