霞の杜幻影展示場

Crystallist

story digest1

 時はロッソ帝国ゲイブル二世治世暦六陽年、共通暦とするならば1019年のこと。
 16歳の誕生日を迎えたリカルドは、近衛騎士団入隊の挨拶の為、父である将軍スカッドに連れられてゲイブル二世に謁見する。
 
 謁見の間での短い対面は、未だ少年の域を出ないリカルドを圧倒。
 尊敬する父と共に、祖国のため、この王に仕えるということは彼を奮い立たせた。
 
 謁見を終え城を辞するとき、リカルドは城の中庭で一人の少年と出会う。
 その少年とは、天獣騎士団の見習い騎士、アルフレッド。
 事情があって騎士団領を離れられない団長、ガルウィンに代わって城を訪れた副団長、ミネアの付き人として、彼女と自分の天獣と共に中庭に控えていた。
 同じ見習い騎士の身であることから、彼に親近感を覚えたリカルドは、共に励み、正騎士としてどちらがはやく認められるかを競い合おうと無邪気に提案する。
 アルフレッドは何故か浮かない顔をしながら、それでも了承の頷きを返した。
 
 帰宅したリカルドを待っていたのは、心配性のレックスと好奇心旺盛な親友のマイク。
 マイクはほんの二年前に、スカッドが南部地区の動乱を収めたときに連れ帰ってきた戦災孤児だったが、年近いリカルドとは直ぐに打ち解け、今では周囲も認める親友同士となっている。
 後からやってきた世話役のカーラにも粗相は無かったかなど冷静に突っ込まれながら、その日は和やかにリカルドの門出を祝う宴が開かれた。
 
 翌日。登城し上司の下に赴いたリカルドは初任務を与えられる。
 
 二年前、ゲイブル二世は宮廷に仕える女性理術師と結婚した。
 それ以前から関係は噂されていたものを、動乱平定を契機に正式な婚姻関係を結んだのだ。
 しかし当時は継承戦争期からの忠臣の落命といった凶事もあり、大掛かりな式典は控えられていた。
 
 その翌年は治世暦六陰年。
 改めて慶事を祝うには年が悪く、専ら帝国貴族院は動乱の後処理とレジスタンス対策に追われた。
 だが、更に翌年である今年には、そういった制約も存在しない。
 このため、寵妃シェルリーゼの望みでありゲイブル二世の願いでもある、大規模な成婚披露祝賀式が、改めて開催されることとなったのだ。
 
 リカルドに与えられた任務は、この式典への招待状を、離島に住む暦作師に届けることだった。
 
 ロッソ建国の初めより彼の地にあると噂される年齢不詳の理術師は、暦作を求められればこれを書き届けたが、その姿を見たものはこの数十年間存在しないと言われる。
 歴代の皇帝はこれを容認し、代替わりや皇子誕生の折にもただ「報告」としての書状を携えた使者を送るに止めていた。
 そこで、敢えて招待状を届けるということは、姿を見せよと彼または彼女に宣告するも同じことだ。
 偉大なる理術師への歴史的な通告など、見習いの初仕事にしては荷が勝ちすぎる内容とも思われた。
 しかし、あくまでリカルドの役割は招待状を渡すだけの使者であり、返答回収の責は負わない。その程度の使いもできないのかと皇后に呆れた冷ややかな目を向けられては、新米の騎士見習いに任務を断る選択肢はない。
 謹んで拝命したリカルドは、レックスを始めとする信頼する家人達を供にこの任に当たることになった。
 
 離島への移動に海路は仕えない。
 目指す離島の海岸は殆どが切り立った断崖で、潮の流れによりよほど時期を選ばねば、唯一の浜辺にも辿り着けないからだ。
 そのごくまれな時期にでさえ、浜辺に船をつけるには腕利きの船乗りと件の理術師の助力が必要だった。
 でなければ、理術師の召喚はもっと早くに試みられていたことだろう。
  
 リカルド達は王の計らいにより、副団長の王城での仕事が終わるまで待機するのみであったアルフレッドとその相棒に、離島との送迎を受けることになる。
 辺境の出身のマイクは天獣騎士団を良く知らなかったようだ。
 初めて目の当たりにする天獣の姿に怯えたところをアルフレッドに鼻で笑われ、早々に二人は互いにけんか腰の状態になる。
 居心地の良いとは言えない状態で離島に辿り着いた一行だが、到着早々仕掛けられてきた攻撃には流石に団結して立ち向かった。
 
 仕掛けてきたのは自称理術師の弟子であるルード。
 突然の攻撃を詰るマイクに、ルードは先触れ無い訪問をあてこする。
 またもや険悪さを醸し出す一行の空気を、ルードの一言が換えた。
 理術師が、リカルド一人になら直接対面すると言うからだ。
 
 王からの親書を携えたリカルドは作暦の理術師レスナーダの書斎に導かれ、そこで未来に対する警告と抽象的な助言を与えられる。

暦が……ややこしい!
2022/07/20 up
top