I never say "good-bye"1
「なあ、あれってSONOKAじゃね?」
涼二の言葉に、一同は足を止めた。
休日の街並み。
涼二と那須章介は、偶然に出会った如月達と、テニスや学校の話に盛り上がっているところだった。
―――SONOKA。
それは、最近テレビで注目を集めている超能力少女の名前。
不思議な力と、アイドル張りの容姿から人気も高く、涼二もそういったファンの一人だった。
SONOKAによく似た少女は、彼らの視線に気付くと、ぱっと明るい顔になって駆け寄って来た。
「あっえ、こ、こっち来るよ、どーしよ、那須ぅ」
「よかったじゃない、リョージ、ファンなんでしょ」
泣きつく涼二を宥める那須も、戸惑いを隠せなかった。
彼女があまりにも、テレビで見るSONOKAそっくりで、なのに、彼ら以外の誰も、彼女に気付かないのが不思議でならなかった。
「こんなところうろついてるなんて、どうかしてるよ」
彼女が何か言うより先に、そっけない言葉が涼二達の間から聞こえた。
「ひどいな、久しぶりなのに冷たいじゃん、淳」
くすくす笑う彼女は、如月の言いようを気にしていない様子。
「昔から関わるとろくなことないからね。自覚してるだろ? 園花」
「ひどい〜」
「それより、何か用、あるんじゃないの?」
「ん〜、あったりなかったり。ね、淳、久しぶりに遊ぼうよ!」
「僕の都合なんて聞かないんだろ、どうせ」
「だって、淳、今デート中ってわけでもないんでしょ?」
「気持ちの悪い想像すると、事務所に電話するよ?」
「うーわー、冗談よ、じょ、う、だ、ん!」
仲睦まじい会話をかわす、如月と、ソノカと呼ばれた少女を、涼二達は呆気にとられた顔で見つめてしまった。
「淳、淳って……どういう知り合いだよ」
「紹介、してくれないかな、僕たちにも」
如月の袖を引っ張る柳原の問いに続いて、那須がにっこり首をかしげる。
如月は少し嫌そうに顔をしかめ、横目に彼女の笑顔を捕らえてため息。
「地元の知り合いの、日暮、園花。SONOKA……そう言った方が、わかりやすいのかな」
「え! 本物!?」
「そうそう本物ホンモノ」
声をあげた涼二に、園花は面白がるような相槌を打つ。
皆、驚いて彼女を見た。
「お、おれサインほしいかも」
「ミーハー」
こそっと袖を引っ張って囁いてきた涼二に、那須は呆れた溜息を一つ。
「知り合い」如月はそんな言い方をしたけれど、どう見ても二人はとても親密な様子で、こうやってプライベートに会いに来た彼女が、周囲の人間に騒ぎ立てられるのを喜ぶはずはないと思った。
「ね、淳、向こう行こうよ!」
「僕一人でいるんじゃないけど?」
「ならみんな一緒に! いいでしょ?」
如月の腕に絡まった園花はにっこり笑って、彼の周囲にいる一人一人に同意をねだる。
一も二もなく頷いたのは、涼二と柳原。
「僕も……構わないよ?」
「お、俺だって……」
那須が頷いた後に慌ててそれに倣った雄介は、兄貴にミーハーと笑われたくなくて、様子を窺っていただけらしく、僅かに頬を赤くしている。
如月は溜息をついた。
「それで……どこに行きたいんだって?」
「流石淳ッ! そうこなくっちゃw」
歓声を上げた園花の態度が、どこか芝居がかっているように思え、那須はふと眉を顰めた。
(02-12-07)→(06-10-26)修正