I never say "good-bye"7

 

 

 

「淳、今の「ホントは〜」って何のことだよ?」

「ああ……以前、好きな食べ物の話になって、園花と「焼き鳥はシオが一番」「タレが基本」ってムキになっ……アレ?」

 柳原に問われて、応える途中で如月は言葉を途切れさせた。

 

 ポタ。

 

 乾きかけたブロックのシミ―――園花の涙の痕跡に、重なるように落とされる、滴。

 

 

「如月……あの人達は―――」

「いいんだ、那須。僕も……知ってるから」

 

 見かねて何かを告げようとした那須に、如月は首を振って見せた。

 

 

「如月さん……」

「淳……」

 

 

「僕……は。僕、こそ、あの時、何が何でも園花をテニスに引き留めておくべきだったんだ……!」

「それは仕方ないよ。今更、ここで言っても仕方ないじゃん」

 片腕で顔を覆って自責する如月の顔を下から覗き込んで、涼二は素っ気ないとも思える軽い口調で反論した。

 

 

「それよりさ、戻ってきた園花ちゃんが納得できるプレーヤーになる―――なれるよう頑張る方、よっぽど園花ちゃんのためになるって」

 

 ぽん、と如月の肩を一押し。

 そのまま軽い伸びをして、涼二は「なっ?」と笑顔を見せた。

 

 

「涼二らしい、前向きな発想だね」

 考え無し、と咎めようとした那須は途中で苦笑に表情を変え、ぽんぽんと如月の背中を叩いてから、歩き出した涼二の後を追いかけた。

 

 

「それが……一番大変なんだけどね」

 涙の跡が残る声で呟いて、苦笑いする如月を、柳原と雄介、二人のチームメイトが支えるように手を差し延べた。 

 

 

 いつ訪れるかも知れない「いつか」―――その日を目指していくために。

 


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