霞の杜幻影展示場

Crystallist

Story Digest3

 彼が決意を告げると、唐突に現れたルードが勝手に古城に住み着くことを宣言した。

 

「とても見ちゃいられない」

 

 鼻を鳴らした彼が手にするのは、複製されたCrystallist。

 

 彼曰く、目的を果たすには、最低限このリストを埋めるだけの人材を集める必要があるのだと言う。

 

 それが始源理を宿し、動乱の中心となった者の果たすべき当然の役割なのだと。

 

 

 

 ルードの話に従ったわけではないが、より多くの同志を集めるために、リカルド達は情報収集に取り組んだ。

 

 まず彼らの目を惹いたのは、民衆の人気が高い地方領主こそが、謂れ無き叛逆の咎を負わされ幽閉されている現実だった。

 

 リカルドはその中でも特に人望厚い、ある領主一家に興味を寄せた。

 

 

 

 その領主は、領外の者でも一度鼻を聞いたことがあるほどに、文武に長けていた。

 

 不作の年には租税の減免の申請と、叶わぬ分は私財を以って購わんとする無私の心は、腐敗した帝国上層部と相容れるとは思われない。

 

 その上、レジスタンスの活動が活発化したこの時期を狙って、彼の長男の不祥事を理由に領主──ビリジアンは館に幽閉されていた。

 

 当の息子であるニブルは砦の地下牢へ収監、美女と名高いバックス夫人も息子の監督不行き届きを理由に、執政管理官の元で実質的に軟禁状態にあった。

 

 

 

 しかも、マクロの調べによると、ニブルの起こした不祥事は執政官の侍女が関わる如何にも罠といった内容だった。

 

 侍女は執政官の非道に苦しめられた素振りでニブルに近付き、屋敷に引き入れた後、彼に乱暴を働かれたと騒ぎを起こした。

 

 わざと身に纏う衣を破き被害を装った侍女の言葉はニブルの弁明を許さず、領民の動揺を誘い、ビリジアンの評判に綻びを生じさせる。

 

 その僅かな隙間に付け入って、執政官達は彼の身動きを封じたのだ。

 

 

 

 リカルドはランスらと計画を練って、まずはニブル、次いでバックス夫人を救い出す。

 

 義理や状の厚さでも知られるビリジアンの協力を得るためには、当人だけではなく分断された家族を開放する必要があると考えられたからだ。

 

 ニブルから話を聞きだしたランスは、この罠を裏で仕組んでいるのがシェルリーゼ配下の不死者、ミナルリック・ドーブルである事を嗅ぎ付ける。

 

 

 

 真相はこうだ。

 

 侍女はミナルリックに操られたアンデッドであり、バックス家の使用人を少しずつ眷属に作り替えていった。

 

 そのアンデッド達に手引きさせバックス家の内情を探りつつ、ニブルにとって効果的なタイミングで接触を果たした。

 

 対峙した時の侍女本人の発言によると、ニブルが色香に迷わない場合には彼を抹殺する役目も持っていたらしい。

 

 

 

 レジスタンスが二人の救出を果たしたことで、帝国からはビリジアンに翻意ありとみなされ、リカルド達の手を逃れた執政管理官はビリジアンを地下牢に拘束した。

 

 これを救いに来たところを一網打尽とするのが執政管理官の狙いだったようだ。

 

 幸い、マクロの立てた策が効を奏し、一行はビリジアンと、レジスタンスへの物流を行ったとして捕えられていた商人(キヌル・タベィジー)を仲間に加える。

 

 キヌルはフォーライツ家にも出入りする、帝国国内でも有数の商人の一人──リカルド達の顔見知りだった。

ダイジェスト3つ目でやっとシリーズタイトル回収という
2022/09/11 up
top