霞の杜幻影展示場

Crystallist

Story Digest7

 晦瞑剣を入手した事で、レジスタンスは帝都攻略前にミナルリックの抑える城砦を解放する手段を得た。

 

 人ならざる敵勢力を削ぐために、ランスを中心としたメンバーで城砦へと侵入し、ついにミナルリックとその眷族を討ち滅ぼす。

 

 

 

 最早レジスタンスは帝都を除く全ての地域を掌握した。

 

 全軍を挙げて帝都の防衛線に挑み、懐かしの故郷へとリカルドは足を踏み入れる。

 

 囮となる別働隊をマクロ自らが指揮し、リカルドの隊は城門の突破を試みる。

 

 だが──城内へなだれ込んだ彼等の目前で、マクロが仲間に脇腹を刺された。

 

 

 

 そのままマクロを人質に、レジスタンスの撤退を要求するのはグリッドという、ビットの側近を務めていた男だった。

  

 

 

 グリッドは自分こそがレジスタンスに潜入していたスパイであり、ビットやエディータ、レックスらを死に追いやった張本人であると明かす。

 

 彼はリカルドに死を与えようと手を尽くしたが、レックスやマクロに阻まれてそれを果たす事ができなかった。

 

 この期に及んで潜伏を続けるのは意味がない。どのような手を使っても、皇帝を害させるわけにはいかない──グリッドの告白には、レジスタンスの初期メンバー達が酷く打ちのめされた。

 

 

 

 怒りに打ち震えるフェイスが武器を掲げるのを、リカルドが辛うじて押し留める。

 

 その間に囚われたままのマクロが問う。

 

 ここまでリカルドを阻めずに来たのには、何某か、躊躇もあったのではないかと。

 

 実のところ、グリッドの迷いは、エディータの自決の頃から既に生じていた。

 

 彼女が命がけで守ろうとした未来への芽。

 

 志を受け継いだリカルドの苦悩、そして直面する帝国の歪み──元凶たる女理術師を滅ぼせば、ゲイブル二世も目を覚ますのではないかと心が傾き、皇帝の寵妃にそのような事はできないと言い聞かせる、繰り返し。

 

 

 

 リカルドは、自分達の目的が皇帝を害する事ではなく、本道に立ち返らせることなのだとグリッドに説き、マクロの解放を求める。

 

 幾つかの問答の後グリッドはリカルドへ従い、マクロを救護班に引き渡す。

 

 マクロの安否は気遣われたが、彼自身が立ち止まる事を許さなかったので、リカルド達は彼を欠いたまま城内の掌握に乗り出した。

 

 

 

 フェイス、ランスらが率いる陽動の部隊と、リカルドの率いる玉座の間を目指す本隊。

 

 本隊には、嘗てロッソの将兵を務めた者達が終結していた。

 

 向かってくる近衛兵達を退け、いよいよリカルドはかつての主君、皇帝ゲイブル二世と対峙する。

 

 入隊の挨拶をした時に覚えた畏怖も今は感じず、堂々と顔をあげて圧政の改善を要求する。

 

 

 

 ゲイブル二世の双眸には理知の光があった。

 

 リカルドに同行する仲間達や帝国の現状を憂いてレジスタンスに与した者達は、皇帝が正気を取り戻し停戦が実現するのではないかと期待を込めて答えを待つ。

 

 けれどゲイブル二世は、望む未来を手に入れるには自分を倒す他は無いと彼の申し出を拒絶した。

 

 そして、皇帝位と共に先王から引き継いだ始源理の力を解放し、リカルド達の前へ立ち塞がる。

 

 やむなくこれと対決する事となった一行は、熾烈な戦いを越えこれを討ち果たした。

 

 力を使い果たし崩れ落ちるゲイブル二世に、リカルドは改めて良政の復活をと皇帝に懇願する。

 

 

 次の拒絶は、寵姫シェルリーゼによってもたらされた。

 

 

 

 理術の不意打ちでゲイブル二世からリカルド達を遠ざけたシェルリーゼは、呆気なく膝をついた皇帝をも嘲笑い、この時より彼を廃し自分がロッソの帝位につくと宣言する。

 

 この国を掌握するためにゲイブル二世は十分に役立ったが、反逆者に簡単に屈するような腰抜けは最早不要、帝位を譲り自害せよ、と。

 

 彼女自身の口から、ゲイブル二世を始めとする帝国中枢の変化は、シェルリーゼの持つ始源理──愛憎の理によってもたらされたものと知らされる。

 

 同行したかつてのロッソ将兵達は酷く打ちのめされた。

 

 しかし、勝ち誇るシェルリーゼに対し、ゲイブル二世の口からはいつまでたっても禅譲の言葉は出てこなかった。

 

 

 

 何故ならば、同じ始源理を身に宿す彼には、始源理の術に対する強い耐性が備わっていたからだ。

 

 皇帝はリカルド達を睥睨するシェルリーゼを背後から抱き締め、その心臓に剣を突きたてた。

 

 

 

 自身をも貫く、死の抱擁。

 

 

 

 彼は静かに語る。

 

 愛憎の理の誘惑によるものではなく、自ら望んで彼女を受け容れ、自覚していながらに道を踏み外した。

 

 個人的な感情で国を乱した、その責任を取る時が来たのだと。

 

 シェルリーゼは必死に抵抗したが、既に命が身体を離れていく兆候として、彼女の右手からは始源理の水晶が浮かび上がっていた。

 

 

 

 強者の理と愛憎の理、二つの始源理は城の上空へと並んで浮かび上がり、そして次の瞬間、何処かへと飛び去って行く。

 

 それと同時に玉座の間では、ゲイブル二世とシェルリーゼの姿が、さらさらと砂のように崩れ去って行った。

クリスタルに侵食された始源理の宿主の末路は……
2022/11/04 up
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